数年前からロンドンついて制作をしている。でもそれはけしてリアルなロンドンを描こうとする行為ではない。

イギリスは私の憧れの地である。きっかけは音楽からで、自分を支えてくれる曲を作る人々が育ち、教育を施され、存在する環境とはどんな場なのか興味を持った事からだった。

2011年3月、はじめてロンドンに旅行。帰国後ロンドンについて描きだす。次第にそれは現実のロンドンからだんだんとずれ始め、私のロンドン、パラレルワールドのロンドンと変化していく。

2011年8月、ロンドンで暴動が起こり、現実は憧れる部分ばかりではなく街には問題が溢れる事を知る。記憶と憧れ、暴動が入り混じる場所へと変化していく。

今、どうしたら私はロンドンに半永久的に存在することができるのか？が作品のテーマとなっている。

私はロンドン市民ではなく日本人で、滞在するのにも多くの問題が山積みである。日本で生活をする私は、今すぐに行きたくても行くことができない。また人には時間的な限りがある。生きている間でしか存在する事はできない。私はそんな時間の枠も関係なくあの街に存在したい。ずっとあの場にいたいのだ。

ではどうしたら諸問題や時間に縛られず、半永遠的に街に存在することができるのだろうか？

それはきっとは街の一部になることだと私は考えている。街の一部として同化し、街として自分も存在すること。それができれば半永久的に街に存在できるのではないだろうか。勿論そんなことは現実にはできないが、画面上では可能である。絵として叶えることはできるのである。

そんな不可能な願望をこめて私は今、自身をロンドンの住宅の青いドアとして、街を走るダブルデッカーとして、公園の樹木として、キューガーデンの孔雀として存在させている。そしてそれが今日本にいる私のもどかしさを埋められる制作(行為)であり、遠く離れているからこそできる作品だと考えている。